【スタートの合図は「よ~いドン!」】

運動会など競技のスタート合図は「位置について よ~い ドン(ピストル音)」と決まっている。と言うよりも、子供の頃から競技に限らず物事のスタート時の脳裏に焼き付いている合図である。この「ドン」はピストル音からきたものと思えるが「バン」とか「バギュン」とは言わない。遊び半分でピストルを使用しない場合のスタートも間違いなく「ドン」の掛け声である。

公式競技のスタート合図
いつ頃からだろうか。陸上とか競泳の公式競技におけるスタートの合図で、何と言っているのか全く聞き取れず気になっていた。「位置について・・・・」などとは言っていないことだけは確かである。

調べてみると、英語であることが分かった。「On your marks」→「位置について」 「Set」→「用意」その後、ピストル音でスタートである。この英語での合図は、2006年に競技規則が改正され義務付けられているとのこと。日本国内の競技においてさえ、世界の競技の場を見据えて英語の合図となっているらしい。既に、18年も前から変わっていたのである。お恥ずかしい限り。筆者の認識不足であった。記録とは余り関係のない、小学校・中学校あたりの運動会では、どんな掛け声なのだろうか。

おもしろスタート合図
スポーツ競技とは別世界で、お祭り・イベント的な催し物としてスタートを知らせる合図には、結構面白いものがあるものである。

西宮神社の福男選びでは、『開門』が無言の合図である。全国のえびす神社の総本社である西宮神社で行われる「十日えびす」は、午前6時の開門がスタート合図となる。開門と同時に参拝者が『一番福男』を目指し本殿まで、まっしぐらに走る恒例の行事である。

西宮神社の『福男』」をもじって、宮城県女川町では春のまつりに合わせて『復幸男』を選ぶ競技が開催されている。『福男』をもじっているだけに、ポスターには『本家西宮神社公認 復興伝承』と明記している。この競技、今年で第9回とのことであるが、地元県人でありながら全く知らなかった。合図の掛け声を知った時には思わず泣き笑い状態になってしまった。

まず、競技内容を説明しておこう。13年前の「東日本大震災」の伝承イベントの位置づけである。スタートは町の中心部・女川町役場でゴールは250m先の高台にある女川小中学校となっている。高低差は25mの急こう配である。

さて、泣き笑いしたスタートであるが、スタート時間が津波の押し寄せた15:32に設定したあたりが涙をそそる。そして、泣けた後は笑えるスタートの掛け声である。15:32に合わせた「逃げろ!」の大声が響きわたり一斉に走り出すことになる。

実行委員会に「アッパレ」
この様なイベントこそ、今話題に上がっている「語り部」問題を解決してくれる一つの方法の様な気がする。4年前に、「語り部」の存在に関する思いをブログ公開した。東日本大震災に限らず、沖縄・広島・長崎などの悲惨な出来事を後世に語り継ぐ事は大事であるが、語り継ぐ以外の方法を考えないと、いつかは途絶えてしまうという内容であった。「語り部」は観光ガイドではないのである。

今になって「語り部」がいないことが話題になっている。当然のことと思える。「語り部」が主語ではなく、「伝承」が主語でなくてはならない。他のところでも、この『復幸男』の様に「語り部」にだけ頼っているのではなく、後世に引き継がれる「発想」が必要なのではないだろうか。

宇宙ロケットの発射合図
競争相手がいなくてスタートするのが「宇宙ロケット発射」である。スタート合図はカウントダウンの秒読みで「ゼロ」か「発射」あるいは「点火」の掛け声である。
先日の民間企業ロケット打ち上げで、見事に失敗した出来事があった。それも、打ち上げ数秒後のことであった。観客に事故がなく何よりであった。これから、この様な民間企業ロケット打ち上げが頻繫に行われることと思われるが、発射失敗を考えてスタート合図の「ゼロ」や「発射」の掛け声から、女川『復幸男』の「逃げろ」にしてはどうだろうか。「3・2・1 逃げろ」

ブログ「これでいいのだ」