【年金ぐらし】

伊坂幸太郎のエッセイ集に「仙台ぐらし」がある。そのタイトルに肖って「年金ぐらし」とした。我ながら今回も冴えてる。ボケ老人とは言わせない。

仙台市民が古希を迎えると、市もあの手この手と老人に気を遣ってくれるようである。他で多くの金額(税金)を収めているのだから、その様な気遣いは当然のことではあろう。60歳で退職してから年金満額受給までの5年間は永かった。待ち遠しかった。昔からよく聞いた『年金暮らし』の言葉。どちらかと言うと、優雅な響きがあった。御隠居的なノンビリした生活のイメージがあった。しかし、現実に年金を受給してみると、御隠居的なイメージなどはまるでない。介護保険料やら個人住民税が年金額から引かれて、2ヶ月に1度の支給額は、期待とは大きく違っていた。

年金受給者の優雅さを感じたのは、地下鉄での出来事である。こんな出来事があった。地下鉄改札口で改札機の読み取り部にICカードをタッチする時のことである。前の老人のICカード残額が、5万数千円と言う金額が表示されているのを見た時である。その金額は偶然ではなく、注意して覗き込むと多くの老人の残額が高額なのである。老人たちは明らかに年金受給者の年齢風貌である。サラリーマン時代から筆者は、カードチャージ残額が常に3千円~5千円程度である。万円単位のチャージは、自慢じゃないがしたことが無かった。

自分も、その様な優雅な生活ができることを想像していたサラリーマン時代であったが、年金受給者の身になった現実は冒頭で記した通り現実は期待と全く異なるものであった。

ICカードの残額「万単位表示」の意味は、古希を迎えた現在(いま)分かった。

仙台市では、市内に生活する70歳以上に市バス・地下鉄・宮城交通が利用できる「敬老乗車証」を支給している。専用のICカードに区役所でチャージして利用することができるカードである。しかし、これだけの説明では「敬老乗車証」のメリットは分からない。説明しよう。

仙台市内交通機関の利用者負担額が「一割」なのである。具体的には、1,000円のチャージにつき100円の負担金と言うわけである。老人だからと言って、それ程外出しないとは限らない。筆者は週の半分はパート働きで地下鉄を利用している一人である。一日往復500円の乗車賃が、「敬老乗車証」で50円の運賃支払いということになる。嬉しいことである。

残額が少なくなると、区役所に足を運び3,000円を支払い、カード残額を3万円台にしている。地下鉄改札口で、後ろのヒトが筆者のチャージ残額を見て優雅な年金生活をしている老人だと思わせるのが目的である。小心者の細やかな楽しみである。次回のチャージ残高表示を5万円~6万円台にして見せてやろうと密かに考えている最近である。

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