【ナイキの厚底シューズでそれほど大騒ぎすることもない】

 今年の箱根駅伝で異常にピンク色のシューズを履く選手が多いことが気になった。現在の陸上スポーツ界の流行色なのだろうくらいにしか思っていなかったが、日頃の筆者の情報収集の無さであった。昨年から既にこのピンク色のシューズは話題になっていたらしい。それは、ナイキ厚底シューズは「記録を更新するスーパーシューズ」としてである。

 今年に入って、急にこの厚底シューズが世界的に問題化してきた。世界陸上競技連盟(世界陸連)が、今年の東京五輪での全面使用禁止にするのではないかというのである。

 厚底シューズとはどの様な靴なのかと言うと、3枚のカーボンプレートが搭載され、前足部にナイキ特徴のエアー内臓されているものである。この新たに開発された技術により非公認ながらマラソンにおいて1時間59分40秒の人類で初めて2時間の壁を破った。今までは、2時間5分~10分で争っていたのだから、当然、驚きである。

 筆者は以前ブログで、マラソン競技について投稿したことがある。【ペースメーカー不在の駆け引きマラソンはやはりおもしろい】確かにスポーツ選手は記録を求め試合に臨むわけであるが、マラソンにおいては他の競技とは別の楽しみ方があるような気がしている。勝負の『駆け引き』である。

 オリンピックマラソンで金メダルを2個獲得した選手がいる。アベベ・ベキラ(エチオピア)である。1960年のローマと1964年の東京オリンピックで優勝している。ローマオリンピックでは、靴を履くことなく裸足で走り2時間15分16秒の記録を出している。
 アベベがマラソン競技について残した言葉がある。20kmまでは本気を出すな 30kmまではトップに立つな それでも優勝候補の選手の動きは気にしておけ
正に、『駆け引き』の勝負運びのような気がする。

 裸足であろうが、ナイキのシューズを履こうが、ミズノのシューズを履こうが優勝すればいいのだ。シューズに限らず、スポーツ関連製造企業は製品の改良・開発を常に進めている。この厚底シューズも改良・開発として受け止めることができないものなのだろうか。

 10年程前だったと思うが、スピードスケートの世界でも今回と同じ様なことがあった。スラップスケート靴の出現である。それまでは、靴本体とエッジが一体型であったが、スラップスケート靴は踵部分が靴本体から浮き上がるようになっており走行中の出力伝達が持続される設計になっている。今でこそ、スピードスケート公認であるが当日は大分問題になった。ある選手の言葉が忘れられない。「スケート靴にエンジンがついてさえいなければいいのだ」

 1月末、世界陸連からの発表があった。
東京オリンピックにおいて、4ヶ月前までに購入したシューズは認める。今後、技術的開発をしてはならない。
何が何だか分からない発表である。
ナイキと世界陸連の動きがどうも「きな臭い」。