【老人の睡眠時間と認知症の関係。頭を使わざる者寝るべからず】

 寝る子は育つと昔から言われているが、それは子供の時だけに当てはまる文言で、歳をとった老人には当てはまらないようである。必ずしも充分な睡眠時間をとることは、健康のために良いこととは言えない調査結果がでている。
 それは、老人の域(65歳以上)に入って寝すぎると脳機能の低下をもたらすと言うのである。記憶力の衰えを痛感している現在(いま)、効果があろうとなかろうと、老人に相応しい睡眠時間を実践してゆくことにこしたことはない。

75歳以上の夜更かし
 国立長寿医療センター調査によると、夜更かしする75歳以上は、認知症のリスクが高まるとする調査結果まででている。認知症の発症リスクと就寝時間の関係を見ると、75歳未満では差がなかったが、午後9~11時に寝る人に比べて、午後11時以降に寝る人は認知症の発症リスクが1.83倍高かった。
 但し、明確な理由は明らかにされてはいない。体内時計の自然な流れに逆らうことが、影響を与えているのかも知れないとの推測にとどまっている段階で、何時以降に寝ると、よりリスクが高まるかなど今後さらに研究を進める必要があるとのこと。

睡眠で重要なポイント
 睡眠で重要なことは、就寝時間に加え眠りの深さにありそうである。
寝はじめの3時間が重要で、その時に多くの成長ホルモンが分泌され、身体に良い効果がもたらされるとのこと。自然に眠り、自然に起きる『睡眠のリズム』が重要らしい。体内時計と呼ばれているものである。すなわち基本は意外と単純で、昔に家でも学校でも言われてきた「早寝早起き」のリズムなのかもしれない。
 西濃運輸の配達時間指定は「早くてもダメ 遅くてダメ」が基本であるが、睡眠の場合は「少なくともダメ 多くてもダメ」という睡眠時間の調査結果である。

少なくとも・多くてもダメな睡眠時間
 睡眠時間と脳の関係についての研究結果がでている。年代別の理想的な目安となる睡眠時間を調べたデータである。若い層から老人まで同じではなかった。
15歳では8時間。25歳では7時間。45歳では6時間30分。そして問題の65歳以上では6時間である。年齢を重ねるごとに睡眠時間は少なくなるのが理想的らしい。
 どの様な意味から理想的な睡眠時間なのかと言うと、それ以上の睡眠時間をとると脳機能の低下が進むと言うデータである。60歳以上で6時間以上の睡眠時間をとっている人は、脳の老化が2倍の速さで進むと言う恐ろしいデータである。
 生産力がなく年金暮らしの老人が、勝手気ままに起床はゆっくりなどという生活をしていると、70歳になるころには脳の老化が進みとんでもないことになってしまうと言うことである。

なぜ、寝すぎは悪いのか
 寝すぎが悪い原因までは研究結果として示されてはいない。ここからは、筆者なりに脳機能低下を考えてみた。
 睡眠は、人間が生きていく上で、エネルギーを充電している行為だと思う。体力を消耗したから寝るのであって、自然と目覚めるまで寝ていても悪いことはない。脳の場合も、頭を使ったから休ませて上げるのである。自分のレベルで寝れば良いと思う。
 寝すぎが悪いと言うのではなく、疲れて寝るのであれば何ら問題はないと思える。が、老人を取り巻く環境は、若い人ほど刺激がなく、考えることも少ない。体力も使わない・考えることもしないで寝てばかりいたら脳機能低下に結びつくので好ましくないと言えるのかも知れない。そこに、アルコールのお友達が加われば想像はできる。

 井上ひさしの言葉に「休養すれば頭の筋肉がなまる。あまり書くこともせずに、書けない・書けないとなげくのは、少々わがままである」と。頭も肉体と一緒で筋肉なのであることを述べてている。要は、身体と頭を使い適度な休養・睡眠をとることが認知症の発症リスクを下げる重要な要因になりそうである。