【あやしい美しさ!苦悶・陶酔の橘小夢画集】
思い出したように本棚から引っ張り出して見たくなる一冊「橘小夢画集」(河出書房新社 発行)がある。朝から雨の日の今日、画集を覗いてみた。筆者の宝物である。
橘小夢を知った時、名前が読めなかった。「たちばな さゆめ」と読む。更には、橘小夢とは男性か女性かも分からなかった。「小夢」の雰囲気から女性を連想してしまったが、実像は男性であった。
知るキッカケは、週刊誌で東京・弥生美術館での小夢作品展開催案内で使用されていた『刺青』と『水魔』を見た時である。衝撃を受けた。(ブログ画像は河出書房新社 発行「橘小夢画集」から)
「刺青」
「水魔」
「小夢」を知らないヒトのため簡単に紹介しておくと、明治25年~昭和45年(1892年~1970年)秋田県生まれ。川端画学校で日本画を学び、大正末~昭和初期に挿絵で活躍している。日本画のほかにも版画作品も多い。作品を見た時は、いつの時代に描かれたものか分からなかった。「刺青」にしろ「水魔」は、昭和初期の作品である。とても今から90年近く前に描かれたものとは思えない。新鮮である。
ところが、この様な作品すなわち、ヒトの心を迷わす怪しい美しさ『妖美』の芸術は、民衆を思想的に統制しようとしていた軍国主義下の日本では容認されることは無く「水魔」は発禁処分を受けることになってしまうのである。
「小夢」の作品に江戸川乱歩の小説名と同じ作品名で「鏡地獄」と「押絵と旅する男」がある。江戸川乱歩の世界も、作品によっては異様な世界の話がある。この世では有り得ないことを体験してしまうことである。異様な世界も意外と存在するのかも知れないと、何の違和感もなく引き込まれてしまう。
「毒のある美しさ」を言い表した蛇に巻き付かれた人魚の性的な魅力の作品を紹介。解説には「苦悶しているようでもあり、陶酔しているようでもある」と。
「水妖」
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません