【避難を決心するタイミング】
『運』『不運』を左右するひとつに、判断力がある。豪雨による災害時、避難すれば助かる可能性が高いと分かっていながら、その場から避難するタイミングを外し悲劇を迎えるケースがそれである。命に関わる災害時でさえ、未だ大丈夫、大丈夫と良い方に考えて、その場に踏みとどまろうと考えてしまう。
線状降水帯という気象
今年(2022年)の梅雨明けは例年になく早かった。梅雨入り宣言がされたと思ったら2週間もしないうちに梅雨明け宣言である。異常な天候は梅雨期間だけではなかった。6月だと言うのに毎日の猛暑で、このまま夏突入かとも思われた。
ところが、7月に入ると猛暑に加え雨の日が毎日続き、一旦明けた梅雨が再び戻ってきた感じとなってしまった。そんな中、日頃の気象予報で聞きなれない用語を知った。「線状降水帯」である。これは、梅雨やゲリラ豪雨とは異なる。線のように存在する雨雲の様子を指し、一般的には激しい雨を降らせる積乱雲が集まったものとされる。そして、数時間同じ場所にとどまる性質がある。線状降水帯が発生すると、大雨が長時間続く「集中豪雨」となり甚大な被害を被ることになる。今回も規模の差こそあれ各地での被害が報じられている。
避難の教訓
豪雨の被害状況と被害を被った住民のインタビューはニュースで毎回見るが、ある地域の被害者のインタビューが印象に残った。それは、過去6~7年の間に床下浸水、床上浸水で3度も豪雨の被害に見舞われたという。今回の大雨は今までにない雨量で、床上浸水となり着の身着のままで避難所へ避難したらしい。ところが、前回もそうであった様に、今回も庭先に駐車していた車両はエンジンが水に浸り廃車となってしまった。
ここからが、インタビューの大事な内容である。「2年か3年に一度の割で豪雨の際避難をしているが、今度避難する時は『車』も避難させないとダメだと思います」と。笑える内容ではあるが、確かに納得である。居住補修費用に加え数百万の車買い替えとなれば大変である。事前に車を移動させる場所を決めておくか、車を使用して避難するのかを考えておくことが大事かもしれない。
避難するタイミング
筆者も2年程前、豪雨による床下浸水を体験している。これ以上増水(床上浸水)しないことを祈るだけで、避難することなど考えなかった。濡れたらまずいモノを少しでも高い場所に移動する作業に追われた。同時に、ここまでは浸水してこないだろうと、人間のもつ性で(良い方に・良い方に)考えてしまうものである。
東日本大震災で甚大な津波被害を受けた岩手沿岸部の町の避難に関する話である。津波が到達するまで20分から30分の時間があった。その間に高台に避難しなければならない。沿岸部の町には、町役場が危険をスピーカーを使って知らせる放送設備が設置されている。町全域に避難を促す放送が流される。運命を左右する津波警報を流しても、住民の避難は進まなかったらしい。
そこで、役場放送担当者に代わり、町長自らマイクを握り放送した内容が後に話題となった。それは「津波が間もなく到達する。皆に避難することを命令する」と。一見、体育会系雰囲気を受けるが、生温い、煮え切らない状況に『喝』を入れたようなものである。
災害に対する避難のタイミングは、運命を左右する重要な判断であるが、酒飲みと一緒で「分かっているけど・・・・・」の心境かもしれない。
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