【世田谷一家殺害現場「宮沢家」取り壊しを拒否する遺族の思いに違和感】

 事件発生は2000年の大晦日であるから、19年が過ぎた。未だ犯人は捕まっていない。毎年この時期、年末から年明けは世田谷一家殺害事件のニュースが流れるが、今年のニュースは、内容がいつものとは少し変わっていた。

 殺害された妻のお姉さん(入江 杏さん)が、盛んに訴えかけている様子が映し出された。訴えている相手というのが警察なのか我々視聴者に対してなのかイマイチはっきりしなかった。その内容を掻いつまんでお話すると。

 殺害現場(宮澤家)は老朽化が進んでおり、危険な状態になっているので取り壊しの話があったとのこと。それは、警察からの指摘・助言である。証拠物件の整理はできており、更に家の見取り図は3Ⅾで作成してあるので何ら問題はないというのである。事件後、どの程度家に出入りしていたか分からないが、生活していない家というのは、傷みが激しいことは確かである。

 姉(入江さん)の訴えは、取り壊したくないというのが基本である。
今回、現場を公開した理由と言うのが、家族4人の生きた証として現場を見て欲しいというのである。詳しくニュースの内容を聞いていなかったが、取り壊さずこれからも一般公開するというのだろか。

 残忍な殺人事件であり、未解決のままこの事件を忘れてほしくない。風化させてほしくないと言う遺族の思いなのであるが、第3者は現場を見てどの様な心境になるだろ。何を考えるだろう。現場を見に足をはこぶだろうか。
 現場を保存しようが取り壊ししようが、遺族内での問題・判断である。残しておくことで、風化を防ぐことができるとは考えられない。「事件現場を見て家族の生きた証を感じてほしい」を強要されているような感じになってしまった。素直に受け入れることが出来なかった。 

 これに似たケースで、現場を残して置いて、後世に伝えたいというのが東日本大震災での悲惨な建物である。
避難が遅れて児童が大勢亡くなった小学校とか、町の職員が津波に襲われるギリギリまで避難放送して逃げ遅れた町役場の建物などを、残すべきか取り壊すべきかが各地で議論が交わされた。
 この様な天災による被害を忘れないように残すと言ったところで、何の役にも立たないような気がする。他に教訓として学ばなければならない事が、山ほどある。
 残しておくことで、逆にフラッシュバックで思い出されて嫌な思いをするというのが大半であった。
津波の恐ろしさを忘れないだけなら、海から街の中まで運ばれた漁船をモニュメントとしておいて置けば済むことである。

 世田谷一家殺傷事件が起きた当初、妻の母親は家を取り壊したいと警察に申し出たらしい。事件現場を見たくない気持ちからであろう。それは警察から、捜査の点で許可が出なかった。
 この母親の、早く取り壊したいというのが、本当の遺族の気持ちではなかろうか。
風化することを心配して公開されても・・・・・・・。