【殺人死体処理に困ったら!証拠隠滅の一方法】

 小鷹 信光(こだか のぶみつ)の著書を久しぶりに読みたくなった。小鷹をご存知ない方の為に。職業はミステリ評論家・翻訳家・小説家・アメリカ文化研究家。
久しぶりに読みたくなった本は、今から10年前に発行された『新パパイラスの舟と21の短編』(論創社)である。

小鷹 信光とは
 2015年12月8日(79歳没)海外ハードボイルド作品を日本に紹介、自ら翻訳している。真保裕一は「ハードボイルドのファンを自認する者で小鷹の名を知らない者がいるとすれば、それは知ったかぶりのモグリか初心者だ」と。(Wikipediaの略歴から) 

701ページのお楽しみ 
 内容はと言うと、海外短編ミステリーアンソロジーで、24章から構成されており、各章の最後に短編小説がボーナスとして併録されていいる。ダメ押しで、この本に登場する作家の「著作者索引」までついており、まさにミステリーアンソロジー辞典と称しても良い。

オードブルは24章のタイトル
 タイトルを読むだけで、食欲をそそられる。オードブルだけで腹いっぱいになってしまう。

第1章  美食ミステリ傑作選『忘れられぬ美味』Ⅰ
第2章  美食ミステリ傑作選『忘れられぬ美味』Ⅱ
第3章  警察小説傑作選『ニューヨーク犯科帳』
第4章  夫婦に捧げる犯罪手帖『夫と、妻と、殺人と』
第5章  ユールタイドに捧げる犯罪『クリスマスの死』
第6章  見知らぬ隣人に捧げる犯罪『好奇心は災いのもと』
第7章  不完全脱獄講座『夢多き男たち』
第8章  ドリーム・ファンタジー選『夢見る男たち』
第9章  動物奇讀『十二支殺人事件』
第10章  精選探偵犬物語『愛犬にご注意』
第11章  番外アンソロジー選『化猫から宇宙食まで』
第12章  正論風インタールード『悪魔との契約』
第13章  旅人ファンタジー『見知らぬ町、ゆきずりの人』 
第14章  ゲーム小説精選『女と賭事には・・・・・・』
第15章  契約殺人入門『殺し屋稼業も楽じゃない』 
第16章  特撰電話物語『夜も更けて、電話のベルが』
第17章  謎の書簡1『手紙だけでもミステリは書ける』
第18章  謎の書簡2『手紙とミステリ』
第19章  狩猟殺人選1『狩人の季節』
第20章  狩猟殺人選2『殺戮の掟』
第21章  人形奇讀選『人形はなぜ殺される?』
第22章  絵画ミステリ選『盗まれなかった名画』
第23章  墓場読本『生者のための墓』
第24章  葬儀百科『フィナーレは葬送曲で』

人肉料理は赤ワインで?それとも白ワインで?
 ミステリの世界に限らず、人が人を食べる行為は過去に存在していた。実際にポリネシア文明圏では食人文化が確認されており彼らの記録によると「白人の人肉は煮ても焼いて、ポリネシア人より不味いそうである」と。

 歴史的に古代には、自然に食人行為が行われていたと考えられている。日本の貝塚からも、住民の墓とは別に、貝殻捨て場に獣畜と同様に細かく砕いた人骨が発見されている。

 日本人で留学生だった佐川一政が、パリでオランダ人女性留学生を射殺し遺体の一部を生のまま食べ、一部をフライパンで調理して食べている。

 映画「ハンニバル」レクター教授が少年に人肉の調理したものを進めるシーンが忘れられない。記憶に間違いなければ次のようなことを言っていた。「好きなものばかり食べないで、時には、今まで食べたことがない新しいものを食べることも大事だ」と。調理された臓器がタッパーに入っていた。

ミステリと猟奇
 人が人を食べる行為は同じでも、ミステリと感じるものと猟奇と感じるものがある。ミステリは、神秘的・不思議・推理が漂う。猟奇は、怪奇・異常・快楽さが漂っており、猟奇はそれを求めることが目的となっている。
 一口で言うと、猟奇な事件と思える中にもミステリは、どこかユーモラスがあるものだ。小鷹が紹介している短編小説にそれらを感じる。

 収録作品から一つだけ紹介しようと思う。
最近、隣の妻の姿を見かけなくなった。どこか、旅行にでも行ったくらいに思っている。亭主の様子も特別変わったところはない。ただ一つ変わった事と言えば、亭主の庭仕事が以前と比べ増え、良く働くようになったということである。

 読者は、状況判断から殺された妻を切り刻み、庭に埋めて死体を隠しているのではないかと推理・推測してしまう。
 話の落ちが面白い。亭主は殺した妻を毎日、毎日食べていたのであるが、何もしないで生活していたのでは、食欲がわかないので、庭仕事をして腹を空かしていたというわけである。

完全犯罪
 筆者のブログに「完全犯罪を成し遂げるための殺人死体処理方法」がある。証拠隠滅にゴミ収集車を利用する方法を著したものである。こちらも一読を。

ブログ「これでいいのだ」