【オリンピックの目標は金メダル!すべては自分のため】

『東京オリンピック2020』開催は開会式前日まで綱渡り状態で、もめにもめどうにか開催に至った。しかし開催され一週間経ったた今でも、感染者拡大でオリンピック中止か否かで騒いでいる。そんな中、自転車女子個人ロードレースで無名のオーストリア・アマチュア選手が金メダルに輝いたと言うニュースを目にした。

『江夏の21球』で知られているスポーツ・ノンフィクション作家の山際淳司が書いた「たった一人のオリンピック」を思い出した。津田真男は、2浪の末に大学入学するが、何の希望も持てずにいる時、ふとオリンピックでメダルを取ることを思いつき、それを目標に生活するというノンフィクション作品である。競技を選んだ動機がおもしろい。自分の性格と出場可能性のある各競技を検討した結果、自分一人で戦う一人乗りボート(シングル・スカル)を決めたことである。

今回の、女子個人ロードレースも一人乗りボートと重なる。と言っても、自転車レースの場合は、複数の選手がエースをサポートして上位を狙うのが常識である。プロの競輪に於いても上下関係が影響する。プロに交じって、オーストリアからのアマチュア一人だけの参加。考えたレース運びとは、『序盤からの大逃げ』だった。誰にも邪魔されないレース展開をしようとしたのである。

体力・脚力があっての戦略なのだろうが、プロ相手に実行したのには感動ものである。この選手「リケジョ」は、英国ケンブリッジ大学で数学を学び、現在はスイス連邦工科大ローザンヌ校の博士研究員と言うのも惹かれる。

一人乗りボートを競技種目に決めた津田真男に戻るが、自分一人の力で練習し自費で大会に出場し、最終的にオリンピック出場選手に選ばれることになる。しかし、彼を待ち構えていたのは、日本のオリンピック不参加と言う出来事であった。モスクワ五輪ボイコットである。20代の5年間職にも付かずバイトでオリンピック出場を目指した生活であったが、はかなくも叶わなかった。その後は、ある企業に就職しサラリーマンとなっている。津田は、五輪ボイコットで出場の夢が消えたことについて、「オリンピック参加目標は国のため・大学のため・会社のためではなく自分のためであった」と語っている。

今回のオリンピック自転車女子個人ロードレース金メダル獲得と、数十年前に読んだ「たった一人のオリンピック」を思い出し、元気をもらったので書き残そうと思った。