【日本昔ばなし「カニに尻尾を切られた龍の涙」】

大阪はミナミ道頓堀に店舗を構える金龍ラーメンのトレードマークにもなっている『大型立体看板』。その龍の看板のしっぽ(尻尾)の一部が切断されなければならない事態に陥り、切断作業風景がニュースで放映された。
切断理由と言うのが、龍のしっぽの一部が隣接地にはみ出しているとして訴訟問題まで発展し、結局、金龍ラーメン側がはみ出した部分を切断したと言う訳である。泣く泣く撤去に踏み切らざる得なくなったとは言え常識的に考えて、非があるのは金龍側にあると思うのだが、他のややっこしい問題が絡んでいたのかも知れない。

しかし、看板のしっぽが切られたくらいでは、昔ばなしにもならない。話になったのはそれからの出来事である。なにわ商人の「転んでもただでは起きない」と言うやつである。

気が付けば、龍のしっぽを切り落とした犯人は、近所に店舗をかまえているカニ料理店「かに道楽」の巨大カニで、切断された龍のしっぽをカニがきっちりと挟み、しっぽを切り落とされた龍の目の下には、水色の涙が取り付けられたという筋書きの物語りである。
かに道楽のカニも金龍ラーメンの龍と同様に『大型立体看板』だったことから展開した格好になった。この物語が成り立った要因は、両店舗の龍とカニが『大型立体看板』だったことである。更には恐らく、看板製作者が同一人物ではなかったのか。でなければ、カニに龍のしっぽを挟ませるなどと言う発想は起きそうもない。

「看板」は、商店が店名や商品などを広く訴求する為に、広告を人目につくように挙げたものである。「人目につくように」がキーワードとすると、看板は「大きく表示」し訴求するのが一番手っ取り早く効果も大きい。大きく表示された上に、表示物が立体像であれば、なおさら目立つことになる。

『屋外大型立体看板』の面白さは、キャッチコピー等が無くてもデザイン的に楽しめるところにある。店舗名は思い出せなくても「龍の看板のラーメン店」「巨大なカニの看板の店」などなど、店名の文字(ロゴ)が無くても、目印(標識)の効果は得られそうである。表現物そのものが、トレードマークになり得る。
ビルから飛び降りるゴリラの看板。ビルをよじ登るクライマーの看板。文字での説明は全く見当たらない。何を訴求しようとしているのか分からない。ただ、ビルの場所を印象付け記憶させることには成功していると言える。看板で客を増やす目的の広告宣伝の位置付けとは別ものである。

私的『大型立体看板』の定義づけ
コミカルな物体(造形物)であればあるほど人目を惹き効果がある

手造り造形物であり、いつでも修正可能であること

場所を知らせる標識(トレードマーク)になり得るもの

表現しようとしたい立体物は、建物と接していなければならない。建物から離れた単独表現物は、単なる「モノ」でしかない。それが、美術的な作品に値するモノであれば「オブジェ」と呼ばれてしまう。

車での移動中に、見とれてまい事故を起こす危険性のあるもの

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