【まるで学芸会の三文芝居「アメリカと中国の気球騒動」】

2023年2月の出来事である。バイデン大統領が、自国領土内を飛行する気球を未確認飛行物体と見なし撃墜命令を下した。どうやら気球は中国のモノで、気象観測用に飛ばしたモノとの中国の言い分である。

このニュースを聞いた瞬間、第二次世界大戦中に日本が行った風船爆弾を連想してしまった。吉村 昭の「蜜と爆弾」、森村 誠一の「悪魔の飽食」を読み返してみようと思った。風船爆弾とは、気球に爆弾を搭載し、アメリカ本土へ飛ばした爆弾兵器である。風船爆弾は、無人・無誘導の気球であったが偏西風を利用して北アメリカ大陸まで到達している。戦果は思わしくなかったが、発想が凄い。

日本でも過去に4度も未確認気球が目撃されている。2019年11月に鹿児島県薩摩川内市、2020年6月宮城県仙台市、2021年9月青森県八戸市、2022年1月九州西方の公海上に出現している。結局、気球が目撃されたニュースだけで終わっているが、あの時の気球も中国が飛ばしたモノだったのだろうか。

それにしても、誰が飛ばしたのか分からない気球は、不気味なものである。
学芸会
今回の気球騒動は、まるでアメリカと中国の三文芝居である。アメリカは、中国が飛ばした気球だと、どうしてわかったのか?複数のアンテナを取り付けた気球を最初から中国の偵察用気球と決めつけ、ステルス戦闘機まで出動させ追跡している。気球のスピードに対してステルス戦闘機で追跡する必要があったのだろか。ヘリコプターでも充分なくらいである。

気球外観からは、恐らく中国を匂わせるモノは何も見ることは出来ないはずである。逆に、おとぼけで大きな文字で「WEATHER OBSERVATION」「CHINA」とでも明記しておけば言い逃れが出来そうである。パクリに関しては、凄い感性を持っている中国であるが、気球に関してはお粗末すぎた。

アメリカが最初から中国の気球だと言い切ったことに、ワシントン・ポストでも発表されているように根拠があった。既に、一週間前に中国南部より打ち上げられた時から追跡していたと言うのである。

中国はいつもの如く往生際の悪さはあったが、自国の気球だと認めた。気難しい表情をしたいつもの報道官の言い訳が面白い。通訳すると「中国、何も悪いことしてないあるね!ただの気象気球で、偶然、風に流されてバイデン大統領、あんたの国にたどり着いただけのことあるよ」と。

アメリカもアメリカである。自国の軍事力を誇張するかの如く、戦闘機を出動させ追跡、その後撃墜し気球残骸を回収している。問題は撃墜の方法である。CNNが報じたところによると、FBIが回収できたのは、海面に浮いていた部品の一部のみと言うことである。折角の重要な情報を失ってしまった。どの様な撃墜かは知るところではないが、気球をそっくりそのまま回収できなかったのだろうか。

中国は、素直に自国の気球だと認めていることからも、風船爆弾のような攻撃目的でないことだけは言える。飛ばした中国と撃墜したアメリカの両国の言い分を聞いていると、まるで学芸会の三文芝居のようであった。

気球とツェぺリン

折角の中国気球を粉々に撃墜し、収集情報を失った事は大きいが、筆者としては「無人気球」と言うのが興味深い。ガスバーナーを使用して風を読み高度を調整しながら飛ぶことくらいしか知識が無いが、ドローンのように操縦移動により世界を飛び回り情報を収集していたのである。分かっているようで、それ程知識が無い気球である。

ガスバーナーで何をしているのか調べてみた。気球は空気より軽い気体を風船に詰め込むことで浮力を得て、空中に舞い上がる物体である。バーナーなどで加熱して比重を小さくした空気を利用する熱気球。同じ温度でも空気より軽い水素やヘリウムを利用するガス気球。両方を併用するロジェ気球があると言う。

軽い気体を風船に詰め込む作業と風の流れを読み高度を調整しながら移動する乗り物で、気球自体メカ的な構造じゃないところに何となく不安を感じてしまう。魅力はあっても、乗りたいとは思わない。

ブログ「これでいいのだ」