【明珍風鈴の魅力】

 昨年末、季節外れの風鈴が話題になっていることを知った。内容はと言うと、アメリカでのことで、クリスマスツリーに飾り付けられているというのである。風鈴の使用(飾り物として)考えられないこともないが、日本人の「心」を中々理解できない外国人らしい発想だと思った。
 

風鈴とは
 風鈴とは『音色』である。その音色はヒトが意識して奏でるものではなく、自然の風によってもたらされるもので、その『音色』を求め、製作者は材質・形を作り出しているのである。正に、職人技と言える。

 他方『音色』を聞く側は、音を聞くことで涼し癒しを感じることができる。湿気の多い暑い夏を乗り切る、日本の夏の風物詩であろう。エアコンの普及した現在においても必要なものである。

明珍風鈴を知る
 姫路市の明珍風鈴を知ったのは40年前である。それまで(子供のころ)風鈴の存在感と言えば,夏の季節に幾らかの冷を求め習慣的に、窓辺に吊り下げられていたものであった。「風鈴」と「うちわ」は夏の決まったアイテムであった。
吊り下げていたのは「南部風鈴」である。

 昔はそれ程風鈴を選んで使用していた記憶はない。東北の地に生活していたということだけで、岩手県の南部鉄製による「南部風鈴」を使用していたのであろう。社会人となり地方に出て、ガラス製の「江戸風鈴」真鍮製の「高岡風鈴」そして鉄製の「明珍風鈴」を知って驚かされた。

 正式名称は「明珍火箸(ひばし)風鈴」。形はない。十字形の釣り枠に火箸4本が糸で吊り下げられており真ん中に下げた振り子の金具と触れ合い、音を奏でるのである。他の風鈴は形の面白さもあるが、明珍風鈴は究極的に音色を求めている。

 鉄線を焼いて金づちでたたいて伸ばし形を整えていくだけらしいが、焼き過ぎてもダメ、叩き過ぎてもダメ、更には4本の組み合わせで全く音色が異なるらしい。
一日に完成するのは30個程度らしい。作曲家でシンセサイザー演奏者の冨田勲は、この音色について「何とも奥深い爽やかな響」と表現している。

 言われて見ると、夏の冷を求めて聞く風鈴の域を越しているのかも知れない。
筆者は、1年中吊り下げており、時として何かを思い出したように音が聞きたくなり意識的(故意)に響かせる時がある。そんな魅力のある「明珍火箸風鈴」である。