【感動のポイントを求め蔵王山に登る】

 宮城県と山形県の県境にまたがってそびえ立つ蔵王山。頂上の熊野岳(標高1、848m)よりも、刈田岳(標高1、700m)にある『お釜』が有名である。五色沼とも呼ばれているエメラルドグリーン色の火口湖である。
 ある作家の随筆で、故郷に帰りたくなる理由の一つには、小さな時から見て育った山があるからだと言っていたことが忘れられない。確かに、うなずける。

蔵王山とは
 蔵王山は昔から生活の一部なっていた。子供会の行事と言えば『お釜』登山。高校の恒例行事と言えば南蔵王縦走。明日の運動会、遠足の天気と言えば、前日夕方の蔵王山にかかる曇と靄(もや)の程度で占うことになる。これが良く当るのである。
 そして、遠方からの来客に対しては観光スポットの『お釜』案内が定番となっている。『お釜』を見るだけなら、展望台へはサンダル履きでも行けるくらい整備されている。

お気に入りの登山コース
 筆者は、一年に何度か『お釜』が見たくなり登山する。但し、サンダル履きではない。少しだけ汗を流しながら登るコースがある。と言っても重装備で登る険しい登山ではない。コースを紹介しよう。

 大黒天登山口からスタートするコースで、大黒天登山口は八合目にあたる。大分歩きやすく整備された山道になっていて『お釜』の展望台までは一時間ほどでたどり着く。そのコースが筆者御用達のお楽しみ山道である。

驚きのポイント
 登山コース案内板を見ると分かるが、『お釜』の裏側を登り正面に回り込むもので、あの岩肌の裏側が火口湖『お釜』と分かっていながら、なかなか眺めることができない山道を登り続ける。それが、あるポイントで突然、目の前に火口湖『御釜』の一部が姿を現す。現れた瞬間は正に驚きである。
 毎回登る度に驚くと言うのもおかしなことである。普通は一度学習・経験すると二度目には驚かないものであるのだが・・・・・・・。

この裏側が火口湖であるが、なかなか顔を出さない

突如、火口湖が顔を出すポイントがこの画像である

チャールトン・ヘストン主演「猿の惑星」
 『お釜』が目の前に現れるそのポイントで、毎回必ずチャールトン・ヘストン主演SF映画『猿の惑星』最後のシーンを思い出してしまう。そのシーンとは、チャールトン・ヘストンが宇宙でたどり着いた惑星は実は地球であったと気付く場面である。 
突然目の前に現れた破壊された自由の女神像を見て地球であると気付く驚きの一瞬である。

 破壊された自由の女神像を見た時のチャールトン・ヘストンの驚きと、突然、目の前に現れた『お釜』を見た筆者の驚きとは全くニュアンスが異なるが、決まって映画のシーンを思い出し重なってしまうのである。

 筆者の場合は、驚きと言うよりも、感動であるのかもしれない。『お釜』の全貌を見渡せる頂上までは、驚き・感動の場所からまだ暫く登らなければならない。観光用眺めの『お釜』とは角度が異なるが、筆者お気に入りのコースとなっている。この感動を味わうため蔵王山に登りたくなるのである。
 いくらかでも思いが伝われば幸いである。