【茄子のぬか漬けを食べたくて】

2020-12-08

 スーパーマーケットがなかった時代、食料品の購入は専門店へ買出しに行っていた。筆者の町で言えば、コロッケなら梶川精肉店、油揚げは加藤豆腐屋、大根であれば最上八百屋という具合に我が家の御用達の店であった。では、『塩』はどこへ買いに行けば良かったのか?『塩』は勿論、最上八百屋に決まっていた。塩が八百屋とは。聞いて違和感を覚えるが、漬け物の野菜をつけるには当然、塩が必要である。それを考えると、八百屋が塩を扱うことは道理にかなっている。

 最近、「ぬか漬け」に挑戦している人が多いという話題をテレビで特集していた。そう仕向けたのも、どこかのTV局による新型コロナウィルスによる新しい生活様式企画かも知れない。自宅にこもる生活が多くなり、ひと手間掛けた料理に挑戦してみては!というわけであろう。

 恐らく番組企画だけあって、挑戦者皆「美味しい!美味しい!」の感想であった。「ぬか漬け」は、そんな一夜にして成し得る技ではないことだけは心得ておいた方が良い。

 数年前のことである。市販の漬け物がイマイチなのと、脳裏に昔にご飯のお供で、祖母が作った美味しい漬け物の味が思い出され、衝動的に「ぬか漬け」をしてみようと思い立った。2年間「ぬか味噌」をかき回し続けた。ぬか味噌のかき回しが「ぬか漬け」のポイントとは言え、遂に感激した味と巡り合う事は出来なかった。それ以来、潔く(いさぎよく)『ぬか漬け』の挑戦は諦めた。

 初めてこう言う事をする場合、ネットでの情報を参考にするのは当然、NHKの番組「ためしてガッテン」も忘れてはならない。但し、この「ためしてガッテン」。以前に発信したブログに記しているように、番組を見終わった時はガッテン納得するが、時間の経過と共に頭からすっかり消えてしまい、意外と役に立たない・身に付いていないのである。

 常温で漬けたり、冷蔵庫で漬けたり色々と試してみたが納得した味の漬け物は出来なかった。特に昔に食べた柔らくて、程よく漬かった茄子の漬け物は遂に出来なかった。参考書では習得出来ない伝統文化なのかもしれない。代々引継ぐ「隠し技」があるのかもしれない。

 『浅漬け』『一夜漬け』『三五八漬け』の素なるモノをスーパーマーケットでよく目にするが、どんなものなのだろうか。兎に角、どれも共通していることは出来上がりが早いことだ。『浅漬け』の素を使えば、軽くもんで30分冷蔵庫に監禁状態で出来上がりとのこと。『一夜漬け』も試験の前の夜に、勉強するのと一緒で早い。試験も一夜漬けで80点獲得出来れば、万々歳。儲けものである。

 「料理は一生懸命作れば絶対美味しい」と言われるが『ぬか漬け』に関しては、当てはまらなかった。