【NHKの姑息なニュース番組制作 経費節減方法】

松本清張の作品に『十万分の一の偶然』という作品がある。アマチュア・カメラマンが、報道写真を投稿するために交通事故を仕掛けるという内容である。ニュースで視聴者投稿『NHKスクープBOX』映像を見ると、偶然性と言う意味で、なぜかこの作品『十万分の一の偶然』を思い出してしまう。

数年前にNHKがスマートフォン映像投稿を呼びかけていたのを思い出される、それが現在の『NHKスクープBOX』だったかどうかは分からない。盛んに、スマホで撮影する時の構え方は、縦向きにしろとか横向きにしろとか、ポイントを説明していたのを記憶している。

その時は、生活の身近な『おもしろ映像』投稿ぐらいにしか思っていなかった。それが最近では、ニュース映像として利用放映されているのが一般的になった。画面隅に「スクープBOX 視聴者撮影」が目障りに感じるくらい多い。投稿映像で使用されているのは、ほとんどが災害映像である。

ニュースの映像で、災害を伝える映像としては確かに「スクープ」であることには違いないが、この手の映像は時として危険な代償が伴うことを視聴者に知らせておくおくことが必要と思われるが何もない。近い将来、災害時撮影で無理をした投稿者の事故が起きそうな予感がしているのは筆者だけだろうか。

最近は台風・大雨など「今までに経験したことのない台風」だとか「何十年かに一度あるかないかの大雨」などの予報が続いている。熱海で発生した土石流の凄まじい映像などは、東日本大震災の津波に襲われた時以来目にしたことが無い。ニュース映像として「スクープ」ものであるが、投稿者自身の「危険」さを感じてしまった。

状況からしてあのような危険な状態で、果たして撮影する思いが起きるものだろうか。避難する思いより、(投稿してやろう!)という思いが強かったのだろうか。東日本大震災の津波の映像を見る限り、皆、高台に避難した後に撮影され投稿されたものである。

この『NHKスクープBOX』でNHKは、何ら危険性を喚起することをしていない。大雨に対して自分の命を守ることが最重要と言っている割には、投稿者のスクープ映像を待っているようである。時には投稿映像に加えて投稿者とその時の状況をインタビュー形式で放送している。投稿した視聴者は番組制作担当者でもないのに、TVカメラマンのように危険な思いまでして取材をしているかのようである。

お盆の時期の大雨時、NHKは朝から夕方まで大雨被害各地の状況を、それも同じ映像ばかり放送していた。被害地の住民は避難の真っ最中で他人のことなど構っている暇はない。更に、地方のヒトの場合は自分の地域の今後の予報を一刻も早く知りたいのである。繰り返し危険な現場からの投稿映像ばかり見るより、国土交通省の映像提供で充分である。
大相撲中継・国会中継に匹敵する全く手間のかからない大雨災害ニュース番組であった。

繰り返しになるが、いくら視聴者の投稿とは言え危険な撮影と思われる映像をニュースで使用しているNHKの制作姿勢に、違和感を覚えてしまう。まるで制作費用の経費節減である。投稿者側も、危険にも拘らず投稿する(したい)がために撮影をすることは止めた方が良い。番組TVカメラマンでも撮影しない危険な現場の映像が、視聴者投稿のニュース映像で放映されているのはおかしな話である。