【ホルマリン漬け標本は怪奇・猟奇的だが引きつけられる何かがある】

 今回は「ホルマリン漬け」についての話である。先日、糠漬けについてのブログを発信した。ホルマリン漬けは、塩漬け浅漬けなどの漬物とは次元が異なる。ホルマリン漬けとは、医学的に珍しい症例の生体を、ホルムアルデヒドの水溶液であるホルマリンに浸し、標本として永久保存することである。 

理科室
 あれは小学生のころだったと思う。理科の解剖実習でカエルの腹を切り開いた。今になって考えたら、授業というより度胸試しみたいなものであった気がする。気の弱い筆者としては、現物で確認しなくても教科書の解剖図で十分だったのだが。

 学校の理科室は構内の中でも、特別な場所である。消毒液?の一種異様な臭いから別世界を感じる。どちらかというと、化学実験を行う場所と言うよりも生物に関しての知識を習得する場所の方が似合っている。人体解剖模型や人骨模型がそれを一番物語っている。最近、廃校に伴い校舎の取り壊しを行ったら、大量の人体パーツのホルマリン漬け標本が出てきて、そのパーツが本物か模型か?違法性はないのかで話題になった。

ホルマリン漬け
 校舎取り壊し跡から人体パーツのホルマリン漬け標本が出てきた件であるが、ニュースを聞いて違和感を覚えた。教材として、ホルマリン漬けの人体パーツが必要なのだろうかと。

 元々ホルマリン漬けにする意味は、後日、症例の参考資料とするため現物を永久保存することである。もし、その臓器が模型だとしたらホルマリン漬けにする意味など全くない。模型のホルマリン漬けは単に、雰囲気だけとしか思えない。よりリアルに見せるマジックが『ホルマリン』かも知れない。第一、医学生でもない小学生が人体パーツの標本は、恐らく気持ち悪いだけである。

猟奇的なホルマリン漬け
 いくら医学的な見地から、珍しい症例を保存すると言っても、ホルマリン漬けは猟奇的だ。ヒッチコックの映画にホルマリン漬けの場面が出てくる話がある。厚みのある容器からして不気味な感じだ。ヒッチコック映画に出てきた『指』はホルマリンの容器の中で、当然、機能していないが、今にも動き出すのではないかと思えるところが不気味であり、恐怖であった。

 1958年、小児愛者が愛する余り殺人まで犯し人体を永久に眺めるために水槽にホルマリン漬けにする事件が実際、日本でも起きている。この事件で、犯人は精神鑑定を受けたが責任能力が認められ、懲役10年の刑を受けている。責任能力を持ち合わせているところが恐ろしい。

そっくりそのまま
 現在、3Dプリンターの開発、メイクアップ技術の進化により本物と見分けがつかないくらいのコピーを作り出せるようになった。日本人の器用さは、身近に目にする食品のサンプルが良い例で、食堂のショウウィンドウのサンプル料理は本物そっくりで、食欲をそそるレベルである。海外旅行者のお土産でかなりの人気らしい。日本人の器用さは、ハリウッド映画のメイクアップ技術でも注目を浴びている。カズ・ヒロその人である。過去の人物をよみがえらせてしまう技術である。ハリウッド映画で、俳優をチャーチル首相にメイクアップで作り上げしまった。昔、蠟人形の「そっくりさん」で感心していたが、蠟人形はもはや過去の物かも知れない。

 カズ・ヒロがオードリーヘップバーンの胸像を作り上げ展示会に出品をしたドキュメンタリー番組を見た。部屋のインテリアとして欲しくなるような作品であった。もし、マリリンモンローの胸像がホルマリン漬け標本になったらどうだろうか。部屋のインテリアにはなりそうもない。容器の中で、ウインクされそうで「怪奇」である。喜ぶのは、暗殺されたアメリカ大統領、JFケネディくらいなものかも。