【あの日から11年やっと色が付いた桜の花びら】
東北地方の桜の開花は、福島県から一ヶ月かけて青森県にたどり着き、丁度5月の連休の弘前城が見ごろとなるのが例年の北上スケジュールである。
その間、毎日何処かの「花見処」がニュースで放映されるが、中継を見ていた時のこと。インタビューに応えていた老人の話を聞いて、思わず10年前の出来事を思い出した。その老人の話とは。
東日本大震災から11年が過ぎ、どうにか花びらに『色』がついてきた。と。
やはり、筆者が10年前に感じたことは錯覚じゃなかったのだ。あの時に咲いた桜の花びらは確かに白かった。
2011年の春
東日本大震災が発生した2011年の春。震災などなかったかのように、その年も桜は開花した。しかし、その時一向に綺麗だとは思わなかった。震災後間もなく心の余裕が無かったこともあったにせよ、桜を見て綺麗だと感じないことがあるモノだろうか。
花びらの色が、雨で洗い流されたか、見ごろも過ぎ散る間際の色あせた感じであった。「白っぽい」色なのである。しかし、ニュースを見ても一向に色あせた花びらが話題にはならない。レポーターも満開・満開・綺麗・綺麗ばっかりであった。
子供の頃からこの歳になるまで、こんな「白っぽい」色の桜を見て感動していたのだろうか?そんなはずはない。桜の花を写生する場合、ピンク系の色付けをしたではないか。種類による差はあっても「白」い花びらのイメージは無い。桜と言えば、表現的には「薄紅色」である。
阿武隈急行の探索
以前から、そのうちに一度は乗ってみようと思っていた路線が「阿武隈急行」であった。路線名と言えば普通は「・・・・鉄道」とか「・・・・線」の名称が一般的だ。「阿武隈急行」と聞くと、列車を指しているように思えるが、列記とした路線名となっているのである。
「急行」が付いていても各駅停車の列車である。福島県と宮城県をまたいで走る24駅、54.9㎞の第三セクターの鉄道会社である。
時間にとらわれないローカル線鉄道旅行。震災翌年に桜の名所「やながわ希望の森公園」があると聞き出かけることにした。10年前の話である。
駅からの途中、小学校の校庭を囲むように植えられた桜を見たときは感動ものであった。遠い昔に帰ったような感じになった。桜並木そのものではなく、学舎と桜の組み合わせに感動したのである。
公園は公園で観光目的の整備がされているが、学舎の桜並木はまた別のモノである。校庭と桜に6年間の思い出が残されている。ここであれば、公園でなくても豪華花見大宴会ができそうである。
この時の花びらの色が「白」かった。根拠もないのに、地震との関係を勝手に結びつけてしまった。凄く印象に残っている光景であった。一瞬、自分の感覚を疑ったくらいである。桜の色って、本当はこんな色なんだったんだ。と。その後、何年も「白っぽい花びら」を見ることになるので、疑いも薄れてしまった。と同時に、何故か、改まって、花見に出かけることはなくなってしまった。
そんな時に、TVのインタビューの「花びらに色が付いてきた」である。来年は、もっと「薄紅色」になって欲しいものである。
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